貿易の基礎知識! 関税の仕組みについて
関税という言葉は聞いたことがあっても、その目的が何なのか、どのような仕組みになっているかは、普段なかなか知る機会はありません。しかし、これから貿易関係の仕事を始めようと考えている、もしくは興味がある人にとっては、関税のことを知ることで、貿易取引についてより理解が深まります。今回は、関税の仕組みについて解説していきましょう。
結局何のこと? 関税とはどのようなものなのか
関税とは簡単に言えば、ほかの国から商品を輸入する際に輸入する側の国が商品に掛ける、手数料のことです。関税の最も大きな目的は、安く輸入できる外国の商品ばかり買うのを抑えて、国内の商品や産業を守ることにあります。
関税は税金の一種で、種類、税率などは法律や条約で決められており、無税のもの以外に関しては必ず払わなくてはいけません。ただ、さまざまな要因によって関税率は決められた範囲内で変更する場合もあります。
理解しておくべき関税! 関税の代表的な計算方法
関税には、いくつかの計算方法があります。下記で簡単に見ていきましょう。
価格に掛かる:従価税
価格に対して掛けられる関税で、最も一般的なものです。価格に比例するので、輸入品のそのときの価格によって、関税率も上がったり下がったりするため、同じ商品でも時期によって関税の価格が違ってきます。
この方法は、商品の価格が上がっているときには輸入する側にとってメリットになるものの、輸入品の価格が大きく下がったときには、関税が低くなるため外国としては大量に商品を輸出できるようになるので、国内の産業が脅かされるというデメリットがあります。
重量、数量、容積に掛かる:従量税
ガソリン、お酒、たばこなどは、重さや数、容積に対して関税が掛けられます。価格が税率に影響しないので、一定の税率を常に保つことができるものの、商品価格が上がった際でも関税は上がらないため、輸入国の負担が生じるというデメリットがあります。
どちらにも掛かる:混合税
従価税と従量税が合わさった関税のことです。2つの税を併用する場合(複合税)と、2つのうちのいずれか一つを選択する場合(選択税)があります。複合税は、従価税と従量税を同時に掛ける方法であり、従量税だけでは、商品の価格が高くなった場合、税率が低くなってしまうため、従価税も掛けて対応するという方法です。一部の乳製品が対象となっています。
選択税は卵黄、魚油などが対象になり、従価税と従量税の税金を計算し、高い方を採用します。
CIF価格
CIF価格は、関税の計算方法を理解する上では欠かせません。CIFは、輸出地の船積港価格(cost)と海上保険料(Insurance)、運賃(freight)を足した値のことです。
輸入の場合、関税は商品の卸売価格に、上述した保険料や運賃を足した値である、CIF価格に対して掛けられます。つまり、貿易条件が工場渡し(EXW)になっている場合には、工場から輸出港までの運賃、保険料、輸出通関費用も含まれた価格に、関税が掛かるのです。
名前だけでも知っておこう! WTOの協定で定められている特殊関税
そのほかにも、特殊関税と言われている関税があります。ときと場合によって適用される関税です。
補助金関連商品の関税計算:相殺関税
国から補助金を受け生産されている商品が輸入される場合、本来よりも商品の価格が安くなるため、国内産業を脅かす存在にならないように採用される関税です。ただし、課税額は補助金の額を限度としています。
ダンピング(不当廉売)防止策:不当廉売関税
輸出時に、正常価格と比べて低く設定された価格を、ダンピング価格と言います。このダンピング価格の商品が輸入され、国内産業を脅かすと判断された際に、採用されるのが不当廉売関税です。課税額は、本来の価格とダンピング価格の差額が限度となります。
不当な扱いに対しては:報復関税
その商品の輸入に関して不当な扱いがされていると判断された場合、その国から輸入される商品に関して、課税することができます。課税額は、その商品の価格以下を限度としています。
急に輸入品が増加した場合:緊急関税
輸出国の経済状況や変化によって、急に輸出が増加する場合があります。その際に、大量に入ってきた商品によって、国内産業に重大な影響が出ると判断された場合、緊急の対策として課すことができる関税です。ただし、期間を限定する必要があります。
いかがでしたでしょうか。今回は、関税の仕組みついて説明しました。関税にもいろいろな種類があり、計算方法もオーソドックスなもの以外にも細かく決められたものもあります。上記の内容を参考にして、商品にどのような関税が掛かるのかを把握しておきましょう。