物流業界における人手不足対策
私たちの暮らしは、物流が正常に機能していることで成り立っています。物流が機能不全に陥ってしまったら、日本経済に与えるダメージは甚大です。ところが今、物流業界はとくに運送業において人手不足という深刻な問題を抱えていて、その傾向は今後さらに大きくなると考えられています。では、この人手不足に対してどのような対策をしていけばよいのでしょうか。ここでは、物流業界、とくに運送業界における人手不足の現状と具体的な対策について詳しく解説していきます。
人材不足は年々進んできている
2008年のリーマンショック以降、景気の低迷が長らく続いていましたが、数年前からの円安基調を受けて、製造業などでは業績が上向く企業が増えてきました。それに伴い、国内の物流も活発化し、2009年以降トラックドライバーの有効求人倍率は上昇し続けています。ところが反対にトラックドライバーの求職者数は年々減少傾向にあり、2013年以降は求人数に対して求職者数が下回り始めました。
こうした運送業界における人材不足の背景には、不規則な就労形態、長時間労働、低賃金といった厳しい労働環境と、若者や女性の就労率の低さがあると指摘されています。厚生労働省が2014年に発表した統計によると、大型トラックドライバーの平均労働時間は1ヶ月あたり2592時間で、全産業の平均2124時間と比べると2割以上も長いにもかかわらず、平均年間所得は422万円と全産業の平均から約2割も少ないのが現状です。
人材不足に対して、どのような施策が必要?
トラックドライバーが不足するということはモノが運べないということですから、人材不足は運送業だけでなく、物流業界全体において解決すべき最重要課題のひとつです。この課題解決のためのポイントは、労働環境の改善と若手の人材確保です。具体的にはどのような対策を行えばよいのでしょうか。下記はその具体例です。
1.業務効率化
まずはどの業務にどれだけの負荷がかかっているのかを見直してみましょう。その上で、発送拠点の見直し、発送量の削減といった負担を減らすための施策が必要です。運送業における無駄を軽減するのであれば、発送状況の管理をするために市場適合を目標としたロジスティクスマネジメントなどを採用するとよいでしょう。
2.労働環境の改善
労働時間の軽減や賃金の見直しといった労働環境の改善を行い、魅力のある職場づくりをしていくことも大切です。また、運送業者向けに国土交通省や厚生労働省が設けているさまざまな助成金を積極的に活用するのもおすすめです。助成金の一例は下記の通り。
・両立支援等助成金
女性の活躍促進を目的に、育児や子育てをしやすくする制度の導入や環境整備、育児休業取得者の代替要員の確保、育児休業取得者を現職復帰させた場合などに支給される助成金です。
・キャリア形成促進助成金
人材育成の推進を目的に、職業訓練を実施した事業主などに訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を支給するための助成金。
物流業界の人材不足は今後ますます深刻になることが予測されています。上記を参考に早めに施策を打っていきましょう。